「背すじをピン!と ~鹿高競技ダンス部へようこそ~」完結記念横田卓馬先生スペシャルインタビュー

小鳥翔太(以下「小」):横田先生お久しぶりです。改めまして、「背すじをピン!と」完結おめでとうございます。


横田卓馬(以下「横」)ありがとうございます。


小:本作品は、2015年5月11日の連載開始から約2年間の連載期間となりました。横田先生としても初めての週刊連載、いかがでしたでしょうか。


横:初めての週刊連載は楽しかったですし、週刊少年ジャンプで2年間もよくやったなと思います。

小:自分としても、社交ダンスの漫画があの週刊少年ジャンプで2年間も連載して頂いたことはとても嬉しかったです。本当にありがとうございました。



◆社交ダンスの漫画は難しい…?


横:ただ、今さらですが、社交ダンスの漫画は難しかったですね。

小:やはりそうなのですね。確かに、ダンス経験者ではない横田先生には、大変なところがたくさんあったと思います。具体的にはどのような点が難しかったでしょうか?

横:うーん、難しかったのは、まず第一にステップやポーズが分からない事ですね。

小:おぉ、それはそうですよね。その辺りは何かを参考にされたりしたのでしょうか。

横:実際に競技会を見に行ったり、色々な動画を見て研究しました。

小:うんうん、行きましたねー。自分も何度も同行させて頂きましたが、横田先生の熱心さには頭が下がります。

横:いえいえ。でも、あんなに何度も見に行ったのに、いまだにルールが分からないところもあります。

小:え…!連載開始前から取材に行っていたことを考えると、足掛け3年くらい見ているのに、まだ分からないところがあるのですね…!


横:はい。あんなに見たのに分からない。

小:確かに、社交ダンスの競技会はジャッジの判定も曖昧だし、はっきりしない点が多いですからね…。そのような点はもっと誰が見ても分かりやすいようなシステムにするべく、ダンス界として改善に努めたいと思います。


横:あと、絵を描く時のことで言うと、身体の右半身をずっとつけているという状況が延々続くのが難しいですね。

小:確かに、ラテンはまだしも、スタンダードでは右半身がコンタクトしていることが多いですからね。

横:そうすると、ずっと同じような構図になってしまうので苦労しました。ラテンもしっかり描かないと変なポーズになってしまったりするので、すごく気を付けて描いていましたね。あと、ドレスもかな。ほとんど自分で創作しましたが、デザインを決めるのがとても難しかったです。


小:そうだったのですね。でも、ダンス関係者からしても、ダンスシーンもドレスもよく描かれていると思いました。とても色々と研究して頂いて、本当に感謝致します。

◆主人公を描きすぎた!?


小:本作には主要なキャラクターが10数人登場してきましたが、各キャラクター達それぞれをしっかりと丁寧にピックアップしていたように思います。ジャンプ本誌の巻末コメントでキャラクター1人1人が主人公という話をされていましたが、当初からその予定だったのでしょうか。

横:もちろん、元からその予定でした。ただ、1つ予想外…というか想定外だったのが、主人公の土屋君たちを描きすぎたという事ですね。


小:え!あれで!?後半はほとんど出ていない回が続いていましたよね!?

横:はい、あれで。全体的に描きすぎたし、少し目立たせすぎたかなと。もっと登場シーンが少なく、目立たない予定でした。

小:おぉ…。土屋君は、漫画史上最も目立たない主人公だと思っていましたが…。

横:えー、ジャンプの…というか、漫画全体的に言えるのですが、主人公が活躍しなきゃだめだみたいな風潮があるじゃないですか。

小:そりゃ、その物語の主役ですからね笑

横:もちろん「主人公だから活躍するのは当たり前」かもしれないのですが、自分はキャラクター全員が主人公だと思っているので、全員まんべんなく活躍した方が良いなと。でもそうしてると編集さんからはもっと主人公を目立たせてと言われちゃう。


小:そういう時はその意見を取り入れるのでしょうか。

横:そうですね、納得すれば。まぁでも、結果的には良い感じになったと思いますけどね。

◆普通の人代表・土屋雅春


小:あと読者としては、主人公がライバルたちとしのぎを削って切磋琢磨していく展開も期待していたと思うのですが、土屋君たちはその片鱗も見せずに終わってしまいます。


横:そもそも、普通に考えて、始めて数か月の人が10年以上やってる人に勝てるわけないよと。「主人公が普通の初心者」というテーマがこの作品の根底にあるので、どうしてもそうなりますね。


小:その「普通の人代表」の土屋組。成績としては、1次予選敗退→2次予選敗退→2次予選敗退となっています。主人公としてあるまじき成績ですね笑。ただ、夏の全国大会の2次予選では必殺技である「つちわたブースト」を繰り出して会場の視線を奪いました。


横:決まって良かったですね。


小:ですね。この必殺技を完璧なまでに炸裂させたにもかかわらず、あっさりその予選で敗退してしまう土屋組。これはこの必殺技の決まった流れで準決勝、あわよくば枠が一つ空いているようにも見えた(実際その空き枠には麹町組が入賞)決勝にも手が届くのではと期待する読者も多かったと思いますが。


横:まぁそこも「主人公が普通の初心者」という事につきますね。作品を描き進めていく中でも、その設定だけは外さないようにしてました。始めて数か月で全国大会の決勝6組に残るのは難しいだろうと。


小:そうですね。しかも今高校生くらいの選手はとてもレベルが高いので、始めて4か月で全国大会の決勝に入るのは至難の業ですね。

◆キャラクターの成長が予想を超える!


小:競技会の順位についてですが、夏の全国大会の最終結果をどういう順位にしようという事は最初から決めていたのでしょうか?

横:そうですね…もちろんある程度は先に決めて話を進めていきますけれども、物語を書いている途中で自分の想像よりも急成長するキャラクターが出てきたりするときがあるんです。自分の思っているよりも成長したなというキャラがいたら、そのキャラの順位は上がりますね。成長が自分の意図していたものと異なっていたり、自分でも思っていたよりこのキャラ良いキャラになったなという事があれば。


小:本作でもそのようなキャラクターはいましたでしょうか?


横:本作で言うと、宮大工くんが一番良い例だと思います。彼が当初の予定よりも一番順位を挙げたキャラですね。


小:そうなのですね。確かに、各キャラクターが登場した時のイメージで言うと、御木くんとか金龍院さんの方が格上のような感じで出てきていた感じがありますね。それを倒すぐらいの実力を宮大工くんが身に付けていったと。


横:はい、そうですね。宮大工くんが初めて登場した時の競技会は、想定としては金龍院さんが2位だったんですけれども、思っていたよりも宮大工くんが目立ったんです。あれだけ目立つと、読者としても注目するじゃないですか。という事は、作中の審査員たちもきっと宮大工くんに注目しているだろうと。そこから順位が上がって、準優勝という形になりました。


小:宮大工くんは大きくジャンプアップした訳ですね。その後、高校3年生時には宮大工くんは絶対王者になっていましたからね。そこで言うと逆のパターンなのが御木くんたちですね。初めての鹿高メンバー以外のキャラとして、しかもジュニアチャンプとして登場して、最高のライバル…というか強敵感が満載だったにも関わらず、ほぼ勝てずに終わりを迎えるという。これには何か意図があったのでしょうか。


横:うーんと…決して彼らが弱いわけでなく、彼らは彼らなりにやったけれど、他のキャラクターが強すぎたとか成長が著しかったという感じですね。


小:まぁ、10巻のラストの全国大会では絶対王者の宮大工組とロシアでの武者修行を終えて帰ってきた御木組が対決するという所で終わっているので、この対決がどうなったのかは分かりませんが。もしかしたら御木組が…という事も有りえるわけですね。


横:そう。これも描いてみないと分からないです。もしかしたらこれを描いてる途中で、どちらかが覚醒するかもしれない。


小:それに、もしかしたら土屋組がゾーンに入って2組をなぎ倒すかもしれないですしね!

横:えー…まぁ、99%ないですけど…うーん、まぁ、無くはないのかな笑

◆キャラクターたちの「想い」


小:あと順位の話で言うと、咲本さんにも触れておきたいのですが、彼らは国内負けなしでずっとトップを張っていて、正に無敵のカップルとして登場しました。最終的には部長カップルに負けるわけですが、部長たちに負けるというところは想定してあったのでしょうか?


横:そうですね…物語の綺麗さとしては、部長が勝って終わるというのが漠然とあったのですが、これも描いてみないと分からないと。物語の中でのキャラクターたちの動きによっては、咲本さんたちが勝つことも有りえたと思います。マンガの話になってしまいますが、マンガってよく、こう…ご都合主義というか、「こうしないとマンガ的にちょっと」みたいのがあって、どう考えてもおかしいのに勝っちゃうみたいなのってありますよね。そういうのが嫌だから…やっぱりその、ストーリーのためにキャラクターたちが操り人形的になっちゃってるのが凄く嫌なんです。


小:キャラクターがストーリーを作っているのではなく、ストーリーに対してキャラクターが都合よく動かされていると。


横:そう、キャラクター主体でストーリーを引っ張っていくくらいが良いんじゃないかと思います。

小:確かに横田先生の漫画は自然ですよね。どこかに無理を作らず物語が描かれています。それはやはり意識して取り組んでいるのでしょうか。


横:そうですね。最初のキャラクターの設定とか、もっと言うとキャラクターたちの「想い」とかを裏切らないように、物語を描いているという感じですね。だから、土屋君たちは「初心者」だし、「天才ではない普通の高校生」という設定で描いているので、あそこで勝つのはおかしいかなと。


小:ですね。


◆異なったタイプの主人公たち


小:キャラクターで言うと、あとまずは鹿高メンバーの八巻たちですが、彼らは主人公である土屋組とは全く逆のキャラクターとして描かれていた気がします。はじめてすぐの競技会で結果を残し、溢れる野心と天才的な才能で次々と快進撃を続けていきました。彼らの方が、一般の漫画で言うと主人公になりえるキャラクターだった気がします。


横:そうですね。最初に企画を考えた時に設定をしたのが、1年生は「初心者の主人公」・2年生は「少年漫画の主人公」・3年生は「青年漫画の主人公」という事でした。


小:そうなんですね…!それは初めて知りました。


横:はい。だから3年生はカップルを解消するとかしないとか、そこでちょっと揉めたりするような感じが付きまとっているし、2年生は、初心者だけど始めたらどんどん才能が開花して、短期間でとても上手になって、次々と上位の選手を倒していくという、いつものジャンプのパターンで行っていますね。


小:「いつものジャンプ」。ちょっとトゲがあるような気がしますが笑。あ、八巻と言えば忘れちゃいけないひらりん。彼女は最初から登場する予定だったのでしょうか?


横:はい。予定でした。最初からずっと6人だと発展性が無いと思っていたので。でも、ひらりんは1人で入ってきたから、そういう時はどうする?っていう問題提起をするためでもありましたね。


小:確かに、社交ダンスは1人じゃ踊れないですから、そこは大きな問題ですね。それとひらりんは、後半で八巻パイセンにほのかな恋心を抱いているようなシーンがあったり、土屋君が亘ちゃんにあいまいな態度を取っていると後ろで舌打ちしていたりと、作中で唯一恋愛に対して積極的だった気がするのですが。恋に恋する女の子という感じですよね。


横:ひらりんと八巻に関しては、「正式なカップルじゃないから」そういう雰囲気を持たせても良いかなというのはありました。実際のダンスでも、正式なカップルで恋愛関係にある人たちが、恋愛でうまくいかなくなったからダンスも別れちゃうみたいなことを聞いたので、それは面倒くさいなと。


小:面倒くさい笑。


横:いやまぁ面倒くさいっていうのもあるけど、男女がペアになると必ず恋愛関係になるっていうような、頭の中がピンク色みたいな感じにしたくなかったんですよ。


小:まぁ土屋君が恋愛グイグイ系だったら、作品の雰囲気が全く異なってしまうでしょうしね笑。

◆リオ先輩の入浴シーンが見たかった


小:この「背すじをピン!と」では、主人公である土屋君の急成長も、隠れた才能も、強敵を倒すことも、恋愛話も、女性キャラクターたちのお色気シーンも全く出てこない。今挙げたような、一般的なマンガであるような要素が全く無いにもかかわらず、ジャンプで約2年もやってきて10巻まで続いたというのはスゴイと思います。


横:ありがとうございます。


小:いやね、自分が言いたいのは、せめてもうちょっとお色気シーンがあっても良かったんじゃないかと。よくテコ入れで水着回とか温泉シーンとかがあるじゃないですか。せっかくみんなで合宿に行ってるのに、全っっったく一切それが無かった(泣)。これはどういうことなんですか、横田先生…!


横:まぁ、そりゃ女子もみんな温泉には入っているでしょうけど。でも主人公は土屋君だし、見えないじゃないですか、女湯の景色なんて。


小:八巻が行くかもしれないじゃないですか。


横:八巻はね、意外とそういうとこには行かないんですよ。もう見飽きてるというか、ちまちま覗くよりは、実際に行動に出た方が良いと思ってますね。


小:むむむ…確かにそう考えると、土屋君も八巻も、あのメンバーの入浴シーンを見に行くとは思えませんね。あ、青年漫画のキャラクターとして描かれている部長は…!?


横:見に行くわけがない。オネエだから。


小:そっか、オネエだからね。あ、いや、オネエではないですよね笑


横:ウソウソ。オネエではないですけど、紳士だから。


小:確かに、部長は紳士ですね…。というか、この漫画のキャラクターはみんな紳士ですよね。女性に対して嫌な事をしない。


横:そう、だから、キャラクターたちがどうするかを観察した時に、彼らは覗きになんて行かないだろうという考察の元に導き出された結果ですね。


小:う…そう言われるとそうなのですが、男性読者は残念ですよね…。


横:残念なのも分かるのですが、僕が合宿編で描きたかったのはそこじゃなくて、合宿って覗きなんてなくても色々あって楽しいよねってことなんです。実際、学校の合宿ってなんだか分からないけど楽しかったじゃないですか。それが少しでも描けたら良いなと。


小:そう言われると、返す言葉もございません。そうですね、合宿の楽しさがとても伝わってきて良い合宿編だったと思います…(泣)。


◆楽しむということ


小:そう、合宿編もそうなのですが、作品を通して「楽しさ」というテーマが根底にあるなぁと思っていました。例えば学園祭編なんかも「学園祭って楽しかったよね」って懐かしく思い返すような雰囲気がそこかしこに感じられましたしね。


横:そうですね。僕の漫画って、こういうの楽しいよねとか、みんな知らないかもしれないけどこんな楽しいことがあるんだよ、っていう事を伝えたいなと思っているんです。以前ジャンプ本誌に短期連載していた「こがねいろ」という漫画は受験勉強の話なのですが、大変だったはずの受験勉強も、今思い返してみるとあれはあれで楽しかったじゃん、っていうのを描きたかったんです。今まさに受験勉強している人たちは死にそうになってやっているかもしれないけど、それをちょっと楽しんでみたらいいんじゃない?っていうメッセージも込めて描いていました。


小:そうだったのですね。


横:だから、「背すじをピン!と」も、競技ダンスってよく分からないかもしれないけど、見てたらホントに楽しいし、実際にやったらもっと楽しいんだよ、っていうのを伝えたいと。「学連」っていう大学生の競技ダンス部の子たちに話を聞く時なんかも、みんなみんな楽しいって言うし、部活は辞めちゃったんだけど社交ダンスは好きだからまた踊りたいっていう人もいるし。それくらい楽しいんだっていう事も教えてもらったから、それが伝われば良いなと思っていました。


小:うんうん。終盤の競技会編においても、土屋君たちはもちろんですが、宮大工君の「僕の方が楽しい」や咲本さんの「レッツエンジョイ競技ダンス」など、みんながダンスを楽しんでいる姿が印象に残っていますね。あとはゾノきゅんたちなんかも、テレビ番組「金曜日のツバメたちへ」の一企画ながらも、競技ダンスを楽しんでくれているんじゃないかなーと思って見ていました。


横:「金ツバ」もダンス企画が続いて、最終的にゾノめぐはプロになっていますからね。きっと楽しんでくれていると思います。


小:ちなみにみんなが楽しんでいる中、リオ先輩は1人もやもやして悩み続けていました。作中ではリオ先輩が一番苦労が多かった気がするのですが、それはやはり青年キャラとして、心の葛藤などを中心に描かれていたのでしょうか。


横:そうですね。まず最初の設定として、リオ先輩は部長や他の才気あふれるライバルたちについていけなくなるというキャラクターでした。でも、これも、そこからどうなるかまでは決めていなくて。物語がどのように進むかによって、リオ先輩が成長すれば乗り越えてくれるし、もしかしたらリオ先輩が脱落しちゃうかもしれなかった訳です。


小:作中でなんとか乗り越えて、ダンスを続けてもらえて良かったです。リオ先輩は苦しかったと思いますが、頑張りましたね。


横:僕の想定以上に頑張ってくれて、大活躍をしてくれました。本当にお疲れ様でした。そして優勝おめでとうございます。


小:いやホントに。リオ先輩が一番好きなキャラクターなので、ハッピーエンドにして頂いて良かったです。ありがとうございました。


◆最強のライバル


小:3年生組の最後の試合となった夏の全国大会、前述のように最終的には土井垣組が優勝しましたが、熾烈な戦いがあったライバル咲本組。ここはやっぱりのギリギリの決着だったのでしょうか。

横:そうですね。これもどちらが勝つか分からない状況で作品が進んでいたので、きっと僅差の勝負だったと思います。


小:国内無敗・世代最強だった咲本組。今回が初の敗戦とはなってしまいましたが、十分に「咲本劇場」を披露して咲本譲二の凄さを存分にアピールしていきましたね。…と、ここであまりフィーチャーされなかった感のあるパートナー、サラ。宮大工・柏ペアはもちろん、畔田・奈緒美ペアや金龍院・美乃梨ペアもかなり深いところまで個々の話がされる中、サラだけはそのようなことが少なかった気がするのですが。

横:えー、それに関しては、サラは咲本さんと組んでるせいで強気でワガママで高飛車でみたいな感じに見られるのですが、彼女は「普通」の人なんです。だからあまり描くことがない。


小:普通。確かに、リオ先輩とLINEしているのとかを見ても、リオ&美乃梨とお茶しているのを見ても、今どきの普通の子という感じでしたね。


横:あと言うならば、彼女はあまり弱いところがないということですね。実は他のキャラクター達を掘り下げる時は、そのキャラの弱い部分を描いていたんですね。回想シーンで、このキャラはこんな弱いところがあるんですよ、というものを描いていたのですが、彼女にはそれが無いので、やはりあまり描くことが無かったんですね。まぁあえて弱いところ(?)を挙げるとすれば、相方が最悪という所くらいですかね笑


小:でも、その最悪の彼ともカップルは続いているようですし、なかなか良い関係なのかもしれませんね。


◆キャラクターたちのこれから


小:部長たちがスタンダードを、咲本さんたちがラテンを制した夏の全国大会が終わり、物語はエピローグに入っていきましたね。その土井垣組と咲本組はプロとして海外の競技会に挑戦し、八巻組・畔田組・麹町組もプロとしてダンスを続けていました。大会で活躍していたメンバーたちのほとんどは競技ダンスの「プロ」としての道を選んだわけですが、彼れらがプロになるという設定は最初からあったものなのでしょうか。


横:いや、とりあえず八巻組に関して言えば、最初は想定していなかったですね。まぁこれも同じなのですが、物語を描いていくうちに、高校で辞めるのか、そのまま続けてプロになるのかは決めていませんでした。今回キャラクターたちが選んでくれた道が、プロになるというものだったので、そのようになりました。


小:やはりキャラクターたちの想いが大切なのですね…。ちなみに、麹町組や、全日本チャンピオンの相模原組など、わりと作品後半に出てきたキャラクターたちがいるのですが、このキャラたちは当初から後半で登場する予定だったのでしょうか。


横:そうですね。その予定でした。だいたい競技会の決勝戦は6組で争われるものなので、スタンダードに関してはどう数えても残りそうなカップルが5組しかいないと。そうすると麹町君のペアが必然的に必要になってくるわけです。必要というか、決勝に残ってくるペアなんだからそれなりに上手いだろうし、それこそ今後も活躍するだろうし。だから、いわゆるモブキャラとして出したつもりは全然ないですね。

◆みんながみんなの主人公


小:そうそう、それなんですよ。この作品中では、脇役…とは言いづらいですが、主役以外のキャラもそれぞれエピソードがあったり、実際に活躍をしたりして、物語の中でとても輝いていました。


横:うん。基本的に自分の漫画の中に出てくるキャラクターを、「漫画のキャラ」として捉えてないから、そのー…本当に現実にいたとしたらという感じで考えているので。だから、世間で言われているところの「モブキャラ」たちにだってそれぞれの人生があるし。だから、麹町君…麹町幸朔君だって、しっかり名前だってあるし。


小:そうですね。土屋君たちが3年生の時の1年生たちにもちゃんと名前ありましたもんね。


横:そうですよ。彼らにだって当たり前だけど名前があるし、それぞれの人生があるから。


小:モブA・B・Cじゃないと。


横:そう、A・B・Cじゃないんですよ。だって、現実を見た時に、まずA・B・Cなんて名前付いてる人いないじゃないですか。いや、外国だったらもしかしたらA・B・Cって名前の人がいるかもしれないけど、もしいたとしても、その人たちはモブではないじゃないですか。その人たちはその人の人生を生きているわけだから。だから、物語の主人公じゃなく、今回はあまり出番がなかったとしても、その出番が終わったからポイ、というわけにはいかないんですよ。


小:そういう意味では、土屋君の回想シーンで…確かつちわたブーストを決める時だったと思うのですが、「自分は漫画で言えば脇役、良くて主人公の友人C」という場面がありました。そしてつちわたブーストを決めた後、「ちょっとだけ勇気を出せば、一瞬だけでも主役になれるんだ」と土屋君が言っていました。あれはそのような意味を込めてシーンを描いたという事ですね。


横:はい。そうですね。これも当たり前の事なんですけど、僕たちも含めて1人1人がみんな、「自分の人生の主役なんだ」という事を、もっと自覚した方が良いと思っています。自分が主人公だと思っていれば、ちょっと辛いことが起こっても大丈夫だよ、っていうことを伝えたいという気持ちもありました。


小:漫画の主人公だって辛い事たくさんありますもんね。それを乗り越えて強くなっていくんだと。


横:そう。自分が物語の主人公だから、辛い状況を乗り越えて更に強くなるために、今はちょっと苦しい場面なんだな、と思ってほしいですね。みんな少しくらい辛いことがあってもきっと大丈夫。だって、みんなも主人公なんだから。


小:ですね!


◆読者の皆様へ


小:最後になりましたが、愛読者の方に向けてメッセージを。


横:これから何かはじめたい人、だけど少し不安がある人。そんな人たちがちょっとだけ勇気をもって、一歩踏み出せるきっかけになるような作品になってくれたらと思っています。これまでご愛読頂きまして、本当にありがとうございました。


小:横田先生、次回作も期待しております。本当にお疲れ様でした!