草と木の布

明治、大正から昭和前期まで、日本の各地で見られた仕事着

シャツ、ブラウス、セーター、スーツ、Tシャツなど、現在私たちが着ている服の素材は、綿、毛、絹、そして化学繊維などでできています。
これらの素材はいつ頃から使われていたのでしょう。化学繊維は新しい物ですが、絹は相当昔から、上流階級の衣料として用いられてきました。綿は江戸時代辺りから一般化してきましたが、それでもまだ庶民の間にいきわたってはいなかったようです。
では、昔の、普通の人々は一体どんな物を衣料としていたのでしょう。
最近は、各地の遺跡発掘から縄文時代や弥生時代の人々の暮らしぶりが明らかになり、麻、いら草、藤、楮(こうぞ)、葛、あるいは科(しな)など、草や木の繊維から縄、袋、そして衣料が作られていたことがわかってきました。そして、驚くことに、それらは明治、大正の頃まで、農村、漁村、山村でごく普通に織られ、着られていたのです。


日本の文化といえば、能衣装など特権階級のものが代表的ですが、一般庶民の暮らしの中にも輝かしい「美」、「文化」がありました。
近年の化学染料にはない、藍の風合い、雪解け水でさらした藤や楮の自然の色合い、少しも無駄のないデザイン。今まで注目もされなかったこれらの布もまた、日本の誇るべき「美」ではないでしょうか。ここにご紹介するのは、ほとんどが明治から大正にかけて作られた仕事着です。そして今は作られなくなったものです。わずかに、それらの技術を残そうとしている地域もありますが、なかなかうまくいかないようです。

私たちは、この失われてゆく「美」をなんとか保存してゆこうとコレクションをはじめました。その一部をここにご紹介します。

奈良晒と越後縮の糸
特別展
「奈良晒
―近世南都を支えた布―」より
奈良県立民俗博物館
2000年7/29〜9/24

監修●吉田真一郎・Dai Williams 
デザイン●Audrey the design 
撮影●吉田忠雄スタジオ